亀は万年

駄洒落、好きですか?
僕はわりと好き。
なんか子供の頃って家に「しょーもない駄洒落の本」がある気がするんだけど、僕の家だけだろうか?
まあ、僕の家にはあったんです、そういう本が。
「イルカはいるか?」っていう文章がデカデカと書いてある横にちゃちなイルカのイラストが描いてある、そんな形で駄洒落がいくつも載っている次第。
幼少の記憶の中でも極めて取るに足らないような記憶なんだけれども、その本に掲載されていたある一つの駄洒落が僕の脳みそのどこかにひっかかり続けている。魚の小骨が如く、痛くはないものの確実な違和感が僕を苛み続けている。
だから吐き出させてもらう。こんなものを墓場まで持って行くつもりは毛頭ないから。明日こそ晴れやかな空を見上げたいから。

おっとすまない、前置きが長くなってしまったね。
その駄洒落の横には「美味しそうにバリバリと音を立てて煎餅を喰らう、あからさまに老いぼれた爺亀のイラスト」が描いてあった。

「美味しそうにバリバリと音を立てて煎餅を喰らう、あからさまに老いぼれた爺亀のイラスト」ってなんだ。
かのいらすとやでもここまではカバーしていないんじゃないか。
なんでもかんでも既存のフリー素材で賄えてしまう現代における細やかなアンチテーゼにすら思える。
して、問題は駄洒落本文。

曰く、亀は万年、噛めまんねんなどと。

は〜〜〜〜〜〜い?????

ああああああああああああだめだめだめ。
たかが駄洒落よ?うん、そんなに憤っちゃだめだ、落ち着いて蓮國もり。あなたは冷静、クールに、ね?
もっかい見てみよっか?なんかの間違いかもしれないもんね?ね?せーのっ。

はいはいはいはいはい〜〜〜????
亀は万年、噛めまんねんだぁ????????

だめだわ、もっかい見たけどやっぱりだめだった。
はぁ〜唱えてえ、異議、唱えたいわ〜。
覚えたてのギラか?ってぐらい唱えたい。
今日本でもっともこの駄洒落に異議を唱えたい男、蓮國もりです。以後よろしくお願いいたします。

いえね?駄洒落っていうのはさ、「同音異義語の妙」と「情景の滑稽さ」の二つが噛み合ってこそだと思うのよ。だから多少の嘘や不条理が入り混じるのは仕方がないと思うのよ?

冒頭に出した「イルカはいるか?」であれば、船の上からイルカを探しているときにポロリと口をついてしまいそうな自然さがある。
確かこの本に掲載されていたんだけど、「コウモリの学校、森の中」っていうの。これはいいよね。
句点を挟んでの駄洒落というのはテクニカルでいいし、「ああ確かにコウモリの学校、森の中にあるんだろうな」っていう納得感がある。実際のところ彼らが学校など通ってはいないとしても、だ。

他にもポピュラーな駄洒落と言えば「布団が吹っ飛んだ」なんてのもあるね。
これは確かに大嘘。嘘松。何故なら布団は吹っ飛ばないから。
でもこれは「いや布団が吹っ飛ぶことなんてあるわけねえだろ!」っていうツッコミを引き出す為の文面であって、いわばギャグである。
こんなあけっぴろげなギャグに対して「嘘をつくな!」なんて目くじらを立ててもしょうがない。それこそのれんに腕押し、糠に釘。ネタにマジレス、である。

ここでもう一度、先の駄洒落を見てみよう。
稀代の問題作、「亀は万年、噛めまんねん」である。
そもそも突然方言が出てくるのが不自然ではないか?ということもあるが今はそんなことはどうでもいい。 僕が一番言いたいのは「亀、万年噛めないだろ」。これです。
さっき多少の嘘はしょうがないって言ってたじゃん!ケチ!なんて声が聞こえてきそうだけれども今一度その振り上げた槍を納めて僕の声に耳を傾けては頂けないだろうか。ちょ、マジで、危ねえから。

亀は万年、とは昔から言われており、要は長寿生物である亀であれば一万年ぐらい生きんじゃねえの?ってことである。そうなの?ほんとに?
だからまあ、「亀が一万年生きる」ということに関しては異議はない。
次の一文、「噛めまんねん」。これがあまりに尊大な嘘。事実として主張しているのがタチが悪い。
考えてもみてほしいのだけれど、まあ単純計算で人間が100まで生きるとして。亀はその100倍長寿ってことだよな?
そんでよ、「噛めまんねん」って誇らしげに言えるぐらい人間が煎餅を噛み砕ける年齢、精々70歳とかまでじゃない?各々の健康状態にもよるだろうが。
てことはよ、7000歳の亀は人間で言うところの70歳ぐらいの容態であって然るべきというわけだ。

ほら見ろ、万年噛めないじゃん。

嘘じゃん。気持ちのよくない方の嘘。誰も得しないし、笑いにも繋がらないタイプの嘘。虚栄爺のつまんねえ戯言。もーサイアク。
7000年間しか噛めないくせに万年を騙るな、3000年って遥か遠いぜ?文明が生まれては露と消えていくぜ?
驕り。昂り。正しくは「亀は約一万年弱、健康状態によっては煎餅を噛むことができます。」こう。

駄洒落じゃないじゃん。はい論破。
人間様舐めてんじゃねえぞ、長寿だかなんだか知らねえけどよ。一生甲羅に引きこもって粥でも啜ってな。

まあ、人様の考えたものに文句をつけるだけなら誰だってできるので最後に僕が考えた一瞬の隙のないマーベラスアメイジングでエグゼクティブでクリエイティブな駄洒落を公開して終わろうと思います。

それ!!!

またね。